同規模の信用取引で、韓国株はなぜ4割近く下げ、台湾株は17%にとどまったのか。そして日本株はなぜ巻き込まれたのか

7月28日、日経平均は4.20%下落し、メモリー大手のキオクシアは1日で18%安となった。同じ日、韓国のKOSPIは10.84%下落して今年8回目のサーキットブレーカーが発動され、台湾加権指数は2,030.83ポイント安と史上3番目の下げ幅を記録した。三つの市場が同じ日に下げ、震源は一つである。6月下旬、台湾と韓国の個人投資家が証券会社から借りていた金額はほぼ同じ、いずれも8,000億台湾ドル台(約4兆円)だった。1カ月後、韓国株は高値から4割近く下げ、30万を超える口座が強制決済された。台湾株の下げは17%程度にとどまり、連鎖的な強制決済は起きていない。同じ厚みの信用取引が、なぜ2倍以上違う結果を生んだのか。そして7月に開通したばかりの経路が、ソウルの売りをどのように台北へ運んだのか。
この震源は、6月の二つの高値にさかのぼる。
今年6月、台湾と韓国の株式市場は5日の間隔をおいて相次いで史上最高値をつけた。
6月18日、KOSPIは終値で初めて9,000の大台に乗り、9,063.84で引けた。翌19日には取引時間中に9,385.59まで上昇し、過去最高値を更新した。年初のKOSPIは4,300近辺であり、半年で2倍以上になった計算になる。5日後の6月23日、台湾加権指数は取引時間中に48,218.87をつけ、TSMCは2,535台湾ドルまで買われた。いずれも過去最高値である。
両市場を押し上げたのは同じテーマ、AI(人工知能)需要に牽引された半導体である。台湾はファウンドリー最大手のTSMC、韓国はメモリー大手のサムスン電子とSKハイニックスがその中心にいた。
TSMC1社で台湾株式市場の時価総額の4割超を占め、半導体企業としては世界最大の時価総額を持つ。台湾加権指数は今年上半期に6割超上昇し、主要市場のなかでも屈指の上昇率だった。
1カ月あまりのち、両市場はともに下落した。ただし台湾株の下支えは明らかに強く、下落率には2倍以上の開きが生じた。
7月29日、KOSPIは5,663.24で引けた。前日には1日で10.84%下落して今年8回目のサーキットブレーカーが発動され、市場全体の取引が20分間停止した。29日はさらに5.98%下落し、再びサーキットブレーカーが作動した。韓国の二つの市場が2営業日連続で同時に取引を停止したのは史上初めてである。この2日間で消えた時価総額はおよそ921兆ウォン(約105兆円)、韓国の年間GDPのおよそ3分の1に相当する。6月の高値からの下落率は4割に近い。7月だけで3割を超え、2008年10月の金融危機時に記録した月間最大下落率を上回った。
台北も重い展開だった。7月28日、加権指数は2,030.83ポイント安と史上3番目の下げ幅を記録し、29日にはさらに1,564.18ポイント下げて40,039.18で引けた。取引時間中には一時4万の大台を割り込んでいる。2営業日で3,595ポイントを失った計算になる。TSMCの終値は2,215台湾ドル。6月の高値からの下落率は17%程度である。
この1カ月あまりの間に、韓国では株価が信用取引の担保基準を割り込んだことで、7月13日までに120万を超えるレバレッジ口座に追証が発生した。海外投資銀行のトレーディングデスクの推計によれば、このうち32万から36万の口座が証券会社によって強制決済され、株式が売却されて貸付金が回収された。これは推計値であり、韓国の金融当局は公式な統計を公表していない。ただしデレバレッジの規模が通常の調整をはるかに超えていることは間違いない。
腑に落ちないのはここである。6月下旬、両市場の個人投資家が証券会社から借りていた金額はほぼ同一で、いずれも8,000億台湾ドル台だった。同じ厚みの信用取引が、一方では4割近い下落と数十万口座の強制決済をもたらし、もう一方では17%程度の下落にとどまった。この差はどこから来るのか。

7月17日、台湾株の史上最大の下げ幅。主な売り手は海外投資家だった
その答えを探すには、まず7月17日の台北で何が起きたかを見る必要がある。
この日、加権指数は2,953.71ポイント安の42,671.27で引け、当時としては史上最大の下げ幅となった。TSMCは180台湾ドル安(7.29%安)の2,290台湾ドル。海外投資家の売り越し額は1日で1,890億台湾ドル(約9,600億円)に達し、台湾株式市場の史上最大を記録した。
本来、この下げ方こそ信用取引の連鎖的な強制決済を招きやすい。株価が急落すれば担保の評価額が縮み、維持率を割り込んだ口座は反対売買され、その売りがさらに株価を押し下げ、次の口座を巻き込む。韓国が6月末から7月中旬にかけてたどったのは、まさにこの循環である。
台湾ではそうならなかった。この日、上場市場の信用取引残高は1日で416億台湾ドル減少し、これも史上最大だった。信用取引のポジションが大量に手仕舞われたことは間違いない。しかし市場全体の担保維持率は法定の追証基準である130%からなお距離があり、台湾の処分手続き自体にも猶予が組み込まれている。維持率が130%を割り込んだ場合、証券会社は当日の引け後に通知を出し、投資家には2営業日の入金期限が与えられる。期限までに入金がなく、なおかつ維持率が回復していない場合に初めて、翌営業日に担保が処分される。
台湾の信用取引残高は確かに縮んだが、崩れてはいない。この日の実際の売り圧力は、強制決済された個人投資家ではなく、ポジションを自ら調整した海外投資家から来ていた。
では海外投資家は、なぜその日に台湾株を集中的に売ったのか。手がかりは韓国にある。
この相場を読み解く:韓国株の二つのブレーキと、統計に表れないもう一層のレバレッジ
6月下旬、台湾の信用取引残高は8,000億台湾ドル台、韓国も台湾ドル換算で8,000億台湾ドル台であり、両市場の規模はほぼ同じだった。信用取引残高が大きいほど、市場は借入で支えられた持ち高を多く抱え、株価が下げたときに売却を迫られる圧力も強まる。
韓国市場には性格の異なる二つのブレーキがある。一つ目はサイドカーで、KOSPI200先物が基準値から5%動いた状態が1分続くと、韓国取引所はプログラム売買の注文効力を5分間停止する。止まるのは自動売買だけで、一般の投資家は通常どおり売買できるため、市場そのものは動き続ける。二つ目がサーキットブレーカーで、指数の下落率が8%に達した状態が1分続くと市場全体の取引が20分停止し、誰も売買できなくなる。
今年1月2日から7月24日までに、サイドカーは41回発動された。金融危機の2008年通年の26回を上回る。より重いサーキットブレーカーは、2000年の導入から26年間で15回しか発動されていないが、そのうち最初の25年間が6回、この7カ月間が9回である。過去四半世紀の合計を上回る。しかも7月28日と29日は連日で発動され、新興市場のKOSDAQも同時に停止したため、二つの市場が2営業日続けて同時に止まるという初めての事態となった。
さらに、信用取引残高はレバレッジの全体像ではない。台湾と韓国のいずれにも、信用取引の統計に計上されない株式担保の借入がもう一層存在する。韓国では預託証券を担保とする融資、台湾では証券会社の資金使途を限定しない貸付と、大株主の株式担保融資である。この見えないレバレッジも両市場を動かしている。
この三点を踏まえたうえで、最初の問いに戻る。同じ8,000億台湾ドル台の信用取引で、なぜ一方は数十万口座を失い、もう一方は調整にとどまったのか。

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レバレッジの集中度が違う。台湾の8,000億台湾ドルは数百銘柄に分散し、韓国は2銘柄に集中していた
台湾の8,000億台湾ドルは数百銘柄に分散している。韓国はサムスンとSKハイニックスの2銘柄に高度に集中していた。この集中度は、単一業種の調整が市場全体の連鎖的な強制決済を引き起こしうることを意味する。レバレッジの総量が同じでも、一点に賭けたときの破壊力は分散した場合の数倍になる。
ただし集中度が説明するのは「韓国がなぜ崩れたか」までである。もう一つの問いには答えられない。台湾の信用取引が持ちこたえたのなら、7月17日に海外投資家が史上最大の売り越しを出したのはなぜか。
その答えもまた韓国にある。韓国のデレバレッジが海外投資家にアジア全体の配分見直しを迫り、台湾株が巻き込まれた。そしてその起点は、韓国政府が自国市場を臨界点まで押し上げた規制緩和にある。
ウォン安が生んだ政策の取引:個別株レバレッジ商品18本が同じ日に上場
2025年末、ウォンはドルに対して大きく下落し、韓国の個人投資家の資金は米国株へ流出した。値下がりする通貨を抱えて自国株を買うより、ナスダックを買うほうが合理的だったからである。この年の海外証券投資の純流出は1,400億ドルに達し、うち機関投資家が1,000億ドル、個人が400億ドルを占めた。資金流出はウォン安をさらに加速させた。
個人の資金を国内にとどめるため、韓国政府は投資家が海外で求めていた高レバレッジ商品を国内に移すことを選んだ。規制を改め、個別銘柄の値動きを2倍にする商品の組成を認めたのである。
2026年5月27日、個別株2倍レバレッジETF16本とETN2本、合計18本が韓国取引所に同時上場した。対象はサムスン電子とSKハイニックスが中心である。個人投資家が売買するには、1,000万ウォン(約114万円)の基本委託金を差し入れ、2時間の投資家教育を受ける必要があった。
政策は所期の目的を達した。その後50日でこれらの商品の時価総額は4兆4,000億ウォンから11兆9,000億ウォンへ膨らみ、一時は韓国のETF売買代金の38%を占めた。もともと2銘柄に集中していた信用取引の上に、2倍速の増幅装置が重なった。
大統領府政策室長の金容範は後日、政策の効果を数字で説明している。商品が上場したのち、2026年1月から6月の個人による海外証券への純流出は28億ドルにとどまった。一つの高リスク商品が、年間400億ドルの資金流出をほぼゼロまで抑え込んだことになる。
同じ5月、台湾の証券会社は逆の動きをしていた。5月12日、富邦証券は翌13日から資金使途を限定しない貸付の新規受付を全面停止すると発表した。即日実行のT+0融資も対象である。国泰証券は株式担保貸付を停止し、華南永昌証券は枠を使い切って受付を閉じ、借り換えにも応じなかった。元大証券金融は1日あたりの担保貸付枠を10万台湾ドルまで引き下げた。
これは当局の指示によるものではない。台湾金融監督管理委員会(金管会)の統計では、4月末時点で34社の証券会社全体の与信残高は自己資本の159%であり、法定上限の400%からはなお遠い。上限に達したのは業界全体ではなく、枠の消化が速い個々の証券会社が自ら止めただけである。台湾の市場関係者はこれを「晴れた日に傘を取り上げる」と呼ぶ。
個人投資家の過熱に対し、台湾の証券会社は慎重に与信を絞り、韓国は政府が門を開いて業者が乗り出した。方向は正反対だった。
6月22日、韓国の金融監督院長が公に悔いを述べる。翌日KOSPIは9.99%下落し、同じ日に台湾株は最高値をつけた
個人資金の回帰は韓国株に大きなブームをもたらした。6月19日、KOSPIは取引時間中に過去最高の9,385.59をつけた。5日後の6月24日には、韓国の信用取引残高も過去最高の38兆6,328億ウォン(約8,560億台湾ドル、約4兆4,000億円)を記録した。
レバレッジ、集中度、増幅装置という三つの条件が6月下旬に同時に頂点へ達した。市場の不安も並行して積み上がっていた。レバレッジ商品は上場から1カ月も経たないうちに規模が3倍近くに膨らみ、2銘柄の値動きが指数全体を大きく揺らし、規制緩和が市場のボラティリティを増幅させているという批判が韓国メディアで出始めていた。
6月22日、ソウルの金融監督院で開かれた定例記者会見の場で、李燦振院長は記者団を前に、個別株レバレッジETFの上場を認めたことを後悔していると公に述べた。
翌6月23日、KOSPIは1日で9.99%下落した。
皮肉なことに同じ日、台北では加権指数が取引時間中に48,218.87、TSMCが2,535台湾ドルをつけ、そろって過去最高値を更新している。
二つの市場が、同じ日に正反対の方向へ動いた。
台湾の祝賀相場は24日間しか続かなかった。7月17日、加権指数は史上最大の下げ幅を記録し、海外投資家の売り越し額も史上最大となった。この下落は、どのようにしてソウルから台北まで伝わったのか。
指数の集中度は同じ。違いは、借りた資金が何を担保にしているかにある
指数の集中度で見れば、台湾も韓国と同じくらい脆い。
TSMC1銘柄が台湾50指数の58.96%を占め、サムスンとSKハイニックスの2社でKOSPI50の68.77%を占める。いずれの市場も、ごく少数の銘柄が指数全体を支えている。
本当の違いはその一段下、借りた資金がどこに置かれているかにある。
まず韓国を見る。サムスンとSKハイニックスは単なる主力銘柄ではなく、KOSPIを支えている2銘柄そのものである。LS証券の集計によれば、KOSPIの今年の上昇率101.1%のうち、およそ7割がこの2銘柄によるもので、指数寄与度はそれぞれ34.3ポイントと35.5ポイントに達する。この2銘柄さえ上がっていれば、他の700銘柄あまりが下げても指数は持ちこたえる。最高値を更新した6月19日、値上がりした銘柄は115、値下がりは787だった。
韓国の個人投資家が借りた資金も、その2銘柄に集中していた。7月7日時点で、サムスンとSKハイニックスに対する信用取引残高は合計10兆5,982億ウォンで、KOSPI市場全体の信用取引残高の36%を占めた。韓国の大型株市場で借りられた資金の3分の1以上が、2社に乗っていたことになる。集中はさらに進み、7月14日には2銘柄合計で12兆5,000億ウォン程度と推計され、KOSDAQ市場全体の信用取引残高を上回った。政府が認可した2倍レバレッジ商品も、対象は同じ2銘柄である。すでに集中していた信用取引の上に増幅装置が重なり、指数を支える銘柄が、市場で最もレバレッジのかかった銘柄でもあるという状態が生まれた。
台湾は違う。TSMCは台湾株式市場の時価総額の4割超を占めるが、TSMCを対象とする信用取引残高は440億台湾ドル程度、台湾全体の信用取引残高の5%前後にすぎない。時価総額で4割、レバレッジで5%。8,000億台湾ドル台の信用取引は、その大半が数百の中小型銘柄に向かっていた。
指数の集中度は同じでも、指数を支える銘柄が担保に差し出されているかどうかが違った。韓国は指数を支える2銘柄が市場のレバレッジの3分の1を背負い、台湾を支えるTSMCにはほとんどレバレッジがかかっていない。同じ洗い出しのなかで、韓国は支柱ごと倒れ、台湾で焼けたのは周辺の投機的な資金だった。ただし韓国の損失が米国市場へ広がるにつれ、台湾も無関係ではいられなくなる。
7月10日、SKハイニックスが265億ドルでナスダックに上場。韓国の需給リスクが米国市場へ直結した
7月10日、SKハイニックスは米国預託証券(ADR)の形でナスダックに上場した。ティッカーはSKHY、調達額は265億ドル(約4兆3,000億円)である。2014年にアリババがニューヨーク証券取引所で調達した250億ドルを上回り、外国企業が預託証券を通じて米国市場で調達した過去最大の案件となった。
この日から、韓国で最もレバレッジのかかった銘柄が、ソウルとニューヨークの二つの市場で同時に取引されるようになった。
連動は最初の1週間で確認された。7月13日、韓国では連鎖的な強制決済がなお続いており、ソウルの引け後も売りは止まらなかった。数時間後にニューヨークが開くと、SKハイニックスのADRが売られ、1日で9.3%下落した。ソウルの下げが、その日のうちにニューヨークの板に書き込まれたことになる。
これが台湾株に関係するのは、世界の機関投資家がポジションを一体で管理しているためである。韓国の強制決済による売り圧力と、SKハイニックスの米国市場での下落は、同じ機関の帳簿に載る。評価損はポートフォリオ全体の調整を迫り、リスクを落として現金を厚くする動きにつながる。このとき売却の順序は国別ではなく、流動性の順に決まる。最も売りやすく、最も速く現金化できるものから売られる。
アジアで最も流動性の高い単一銘柄はTSMCである。台北とニューヨークの両方に上場し、海外投資家の保有比率は7割程度、世界の時価総額上位10社に入る。数時間で現金を用意しなければならない運用担当者にとって、売れないという心配が最も少ないアジアのポジションがこれである。つまりTSMCが売られたのは、資産の質が最も高く、最も換金しやすいからだった。
これが先ほどの問いへの答えになる。7月17日、海外投資家が台湾株を集中的に売った理由である。
ただしこの日の売り圧力の源は複合的である。米国のハイテク株も同時に調整しており、先物清算前後のポジション調整も重なっていた。個々の売り注文を韓国に帰することはできない。それでも、韓国の混乱が台湾株の主要な圧力源となった数少ない局面の一つだったことは確かである。両市場を同時に調整する動きは、フローの数字にも表れている。今年に入って海外投資家は韓国株を1,000億ドル超、台湾株を400億ドル近く売り越しており、7月下旬には4週連続で両市場の売り越しが続いた。
7月28日と29日のアジア株安は、この経路を誰の目にも見える形で示した。28日、韓国でサーキットブレーカーが発動された同じ日に、日経平均は4.20%下落し、キオクシアは1日で18%安となった。東京が巻き込まれた日である。29日には韓国の二つの市場が史上初めて2営業日連続で停止し、台湾加権指数はさらに1,564.18ポイント下げて史上7番目の下げ幅を記録した。三つの市場が連日そろって下げ、震源は一つである。ソウルで始まったデレバレッジが、米国市場で増幅され、台北と東京を相次いで直撃した。
この連動は消えるどころか、より緊密になる。7月29日から、SKハイニックスの普通株とADRの双方向転換が可能になり、裁定取引によって両市場の価格差はしだいに縮まっていく。縮まれば、ソウルとニューヨークの間の緩衝はさらに小さくなる。TSMCのADRは数十年前から米国市場で取引されており、台湾株と米国市場の高い連動性はまさにそうして形成された。SKハイニックスはいま同じ道を歩んでいる。アジア市場の投資家にとって、これは日々の確認項目が一つ増えることを意味する。韓国の信用取引残高と、ニューヨークでのSKハイニックスの株価は、フィラデルフィア半導体株指数と並んで毎日見る数字になった。

韓国は認可から全面急ブレーキまで2カ月足らず。台湾では自己資本4倍の上限を6倍へ緩めるよう業界が求めている
7月半ば、両国の規制当局はいずれも動いた。方向は逆だった。
韓国は穴を塞ぎにかかった。7月16日、経済副首相が主宰する会議を経て、金融委員会、金融監督院、韓国取引所が対策を公表した。第一に、個別株レバレッジ商品(ETFとETN)の新規上場を市場が安定するまで暫定的に停止し、広告と販促活動を即日禁止する。第二に、個人投資家の基本委託金を1,000万ウォンから3,000万ウォン(約342万円)へ引き上げ、全額現金とし、株式や債券による代用を認めない。第三に、米国や香港など海外に上場する同種商品にも同じ規制を適用し、迂回する経路を塞ぐ。
7月24日、韓国政府は、当初8月中に予定していた委託金の引き上げを7月31日へ前倒しすると発表した。認可から全面的な急ブレーキまで、2カ月に満たない。
もっともこの規制には韓国国内でも批判があり、最も鋭いのは大口には届かないという指摘である。3,000万ウォンの現金要件が締め出すのは資金の限られた個人であって、外国人投資家、機関投資家、資金力のある個人には実質的な影響がない。門の外に置かれるのは、必ずしもボラティリティを増幅させている層ではない。
台湾の状況は異なる。現行規定では、証券会社が顧客に供与する与信の総額は自己資本の4倍を超えられない。この法定上限の下で、各社は銘柄別、業務別に独自の内部枠を設けており、5月の「晴れた日に傘を取り上げる」動きは、枠の消化が速い証券会社が自社の内部上限に先に達した結果だった。
今年4月、証券会社の業界団体である台湾証券業協会は、この法定上限を4倍から6倍へ引き上げるよう正式に提案した。同協会は規制改正を提案できるが、決定権は持たない。市場の取引ルールを定め執行する台湾証券取引所は作業部会を設けて検討に入り、5月には立法院で2、3カ月以内に案をまとめたいと述べている。改正の可否を決めるのは主管官庁である金管会であり、彭金隆主任委員はこれまでのところ、規範は全体として見直しうるが、監督は市場の発展とリスク管理の双方に配慮する必要があり、調整するとしても段階的に進めると述べている。
この提案は今回の急落より前に出されたものである。韓国はこの2カ月で、集中したレバレッジが制御を失ったときの代償を実演してみせた。台湾の上限を動かすかどうかは、新しい前提のもとで改めて検討されることになる。

台湾のレバレッジは全体として制御可能な範囲にあるが、緩衝は薄くなりつつあり、与信への需要も表面化している。
まず借入の規模を見る。台湾中央銀行の統計では、6月末の信用取引残高は8,035億台湾ドルで過去最高、2000年のITバブル期の5,956億台湾ドルの1.35倍である。ただし市場全体の時価総額で割ると0.5%程度にとどまり、当時の4.55%を大きく下回る。時価総額が信用取引よりも速く膨らんできたため、レバレッジの相対的な強度は極端ではない。
次に担保維持率だが、この指標は計算の基準を確認する必要がある。市場で流通する数字と公式の数字は、30ポイント程度も食い違いうるからである。
7月27日、一部の報道は市場全体の信用取引維持率を143%と伝えた。130%の追証基準に近い水準に聞こえる。これに対し台湾証券取引所は、市場全体の担保維持率は信用買いと信用売りを合算した口座単位で計算し、上場銘柄と店頭銘柄の双方を含むものであり、この日の実際の数値は175.12%だったと説明した。28日の下落後は165.50%に低下したが、130%からはなお遠い。同じ日、追証と処分の金額が市場売買代金に占める比率は、それぞれ0.1%未満、0.03%未満だった。
維持率が130%を割り込んでも、直ちに強制決済されるわけではない。現行規定では証券会社が当日の引け後に通知を出し、通知到達の翌日から2日以内が入金期限となる。期限までに入金がなく、口座単位の維持率が130%以上に回復していない場合に初めて、翌営業日に担保が処分される。処分の手続き自体は両市場でほぼ同じである。違うのは、担保の価値がどれだけ短い時間にどれだけの規模で失われるかであり、1日の値幅が10%に抑えられている台湾では、この2日間の入金期限が意味を持つ。
緩衝が薄くなっているのは確かで、175%から165%までは2営業日の出来事だった。今後は各方面が注視する指標になる。
最後に証券会社の与信である。金管会の統計では、5月末時点の証券会社全体の与信残高は1兆2,546億台湾ドル、自己資本比では178%だった。1年前の同時期は97%、法定上限は400%である。1年で貸出はほぼ倍増した。台湾のレバレッジは水準としてはまだ高くないが、増加の速度は速く、上限緩和の提案もこの需要から出てきたものである。

私の三つの見方:これは需給の洗い出しであってファンダメンタルズの転換ではない、台湾にバブルはない、洗い出しの後にTSMCが台湾株の錨になる
最後に、この相場に対する私の見方を三点述べる。
第一に、これは需給の洗い出しであって、ファンダメンタルズの転換ではない。
最も明確な証拠は7月29日にあった。SKハイニックスが第2四半期決算を発表し、営業利益は前年同期比557%増、営業利益率は76%といずれも過去最高を記録したにもかかわらず、株価はその日に大きく下げた。メモリーのスポット価格はなお上昇しており、足元の需給は逼迫している。市場が本当に懸念しているのは2027年以降の供給であって、現在の需要ではない。ファンダメンタルズは壊れておらず、売りは需給から来ている。韓国株下落の直接の原因はデレバレッジであり、信用取引残高は1カ月で15.2%減った。短期資金の持ち高の整理はまだ続いている。
どこまで進めば終わるのかは、米国のマイクロン・テクノロジーとサンディスクを見ると判断しやすい。両社の株価は今年、一時それぞれ3倍前後、6倍前後まで上昇していたが、7月に入ってマイクロンは2割程度、サンディスクは3割5分以上下げた。同じ月、フィラデルフィア半導体株指数は19%下落し、2008年以来最悪の月間下落率を記録して、全構成銘柄が50日移動平均を下回った。利益確定とデレバレッジの勢いは、まだ出尽くしていない。
デレバレッジの過程では、レバレッジを高めて株価を押し上げてきた企業が試練を迎える。これは健全な調整である。2000年のITバブルのときにも、高値で株式による引退を口にする人がいた。市場が繰り返してきたことである。
第二に、いまは過度に悲観する局面ではない。とくに台湾についてはそうである。市場心理が最悪のときには必ず極端に弱気な見方が増えるが、いまはまだそこまで来ていない。台湾のAI需要は依然として強く、バブル化の証拠もない。誤りがあるのは個別銘柄の水準である。2028年の予想利益に25倍から30倍のPERを掛けて、株価を1,000台湾ドル超まで押し上げている銘柄がある。同じ物差しをTSMCに当てると、今期の1株利益は約100台湾ドル、来期は約130台湾ドル、7月29日の終値2,215台湾ドルで計算したPERは22倍程度にすぎない。TSMCですら得られない評価が、他社に許される理由はない。デレバレッジが洗い流しているのは、まさにこの種の、借入と想像で支えられた価格である。
第三に、この伝播はまだ終わっていないが、台湾株の錨はいっそう明確になる。いまの投資家の多くは国境をまたいで資産を配分しており、SKハイニックスが米国に上場した以上、韓国のボラティリティはニューヨークで増幅され、アジア各市場へ伝わり続ける。7月28日の日本株の下落もこの連鎖の延長であり、同じデレバレッジの整理過程の一部である。台湾にとっては、この洗い出しを終えたあと、TSMCが再び台湾株で最も重要かつ最も安定した存在になる。その評価は最も検証に耐え、その流動性は最初に売られる理由であると同時に、最初に買い戻される理由でもある。
もう一点、付け加えておきたい。韓国が示した核心的な教訓は、信用取引残高がいくらなら危険かということではない。レバレッジが同じテーマに集中し、そこにデリバティブが重なったとき、テーマの正しさは短期の株価を決める要因ではなくなる、ということである。韓国政府は認可し、そののち急ブレーキをかけた。相場は政策の方向に沿って激しく振れ、ファンダメンタルズを離れた政策相場になった。指数の構成が同じく半導体に集中している台湾株にとって、これは記憶しておくに値する警鐘である。



