米中G2が世界を分断 台湾企業は選択を迫られ、半導体サプライチェーンは「一国一体系」に固定化か

半導体産業
著者:林宏文
米中G2が世界を分断 台湾企業は選択を迫られ、半導体サプライチェーンは「一国一体系」に固定化か

最近、台湾のAIマーケティング企業の雄であるAppier(沛星互動科技)の独立取締役である簡立峰(ジエン・リーフォン)博士がホストを務めるPodcastを聞いた。番組内で彼は、世界のトップ100のAIモデルのほとんどが米国と中国の企業によって開発されており、米国のAI産業における人材のうち45%が中国出身であると指摘した。中国はAI技術者を豊富に抱えているものの、米国による輸出制限および技術規制の影響で、多くの企業は海外展開(「出海」)が難しくなっている。例えば、中国のクラウドサービス大手であるアリババクラウド(Alibaba Cloud)は、現在中国国内でのみ展開しており、国際市場には進出できていない。その結果、アリババのAI技術もグローバル化の道が閉ざされている。

簡氏はさらに、中国AI産業が現在「内巻(過度な内部競争、重複投資、資源の非効率化)」に直面しているとし、上位3社を除けば、その他の企業が欧米市場への進出や信頼の獲得を目指すには高いハードルがあると述べた。このような状況において、台湾企業はバイリンガル能力と文化的理解を活かし、橋渡し役を担うチャンスがあるという。彼はこの機会を「昼は英語、夜は中国語を話す」という言葉で表現し、西洋と華語圏の双方を繋ぐ存在になれる可能性を示唆した。

簡博士はかつてGoogle台湾の董事総経理(マネージングディレクター)を務めており、テクノロジートレンドを長年観察してきた人物である。その見解は常に洞察に富み、示唆に富んでいる。今回のインタビューもまた、米中がテクノロジーと市場の主導権を争う中、台湾企業がどのように市場を選択し、ビジネスチャンスを獲得していくべきかを改めて考えさせられる内容だった。

実際、この問題は台湾企業のみならず、筆者が過去2年間にわたり日本や韓国のメディアや半導体業界関係者と交流した際にもたびたび話題となった。彼らが最も関心を寄せているのは、「台湾の半導体企業は中国市場においてどのように競争しているのか」「台湾内部では中国の技術力と産業競争力をどのように評価しているのか」といった点である。

台湾の多くの半導体企業は、米中対立が激化する中、中国で現地企業と公正に競争することが困難であることを十分に理解している。そのため、世界最大のOSAT(後工程の組立・テスト)企業であるASE Technology Holding(日月光半導体)、PTI(力成科技)、KYEC(京元電子)、ChipMOS(南茂科技)などはすでに中国における生産ラインを売却している。「OSAT(封測)」は半導体産業の中でも参入障壁が比較的低い分野であり、台湾企業による撤退の第一波となった。

一方で、台湾のファウンドリー(wafer foundry)やファブレスIC設計企業は、現時点で中国における生産能力や人材配置を大きく縮小してはいないが、多くの企業はすでに中国以外の市場への展開を積極的に進めている。東南アジア、シンガポール、インド、欧米、日本などに新たな拠点を設けたり、現地人材の採用を進めたりしている。この方向転換は、企業が地政学リスクを先読みして戦略的に対応していることを示している。

台湾企業の中には、近年中国から撤退する過程で多くの困難に直面したと語るところもある。撤退を選択した場合、現地政府から過去に受けた税制優遇や投資補助金(税の減免、土地割引、資金助成など)をすべて返還するよう要求されるケースが多い。すべてを清算した上で初めて正式に撤資手続きを完了できる、いわば「身一つで出ていく」ような状態であり、企業にとっては大きな負担となっている。

台湾企業、中国市場の「内巻」競争に参入 超高倍率リターンを追求する戦略も

中国市場に残る選択をした台湾企業は、今後中国市場を最重視する覚悟が求められ、もはや欧米市場と二股をかけることは困難になっている。米中対立の現在、いわゆる「両足戦略」は政策面だけでなく、市場戦略の分岐によっても現実性を失いつつある。

中国市場に深く関与する台湾人ベンチャーキャピタリストの友人は、かつて台湾でベンチャー投資に携わり、米国、台湾、中国の企業に幅広く投資していたという。しかし現在では、中国市場に注力することは、欧米との関係を事実上断ち切ることを意味する。この認識はベンチャー投資界で共通認識となっており、資金調達、技術提携、市場参入のいずれにおいても高い障壁が存在するという。

彼によれば、現在注目している重要な話題はほとんどが、WeChat(微信、中国で最も広く使われているメッセージ・SNSプラットフォーム)上の様々なグループチャットを中心に展開しているという。台湾の友人たちとは連絡を取り続けてはいるが、それぞれが関わる産業動向や人的ネットワークが次第に分離しており、まったく異なる世界に身を置いていると感じているそうだ。

また、中国政府によるテック系スタートアップへの支援と投資は、まさに国家的プロジェクトと言える規模で行われており、資金投入も非常に大きい。業界内では「内巻」と呼ばれる過剰競争や資源の非効率な分配が深刻化しているが、それでも成功すればリターンは非常に大きい。例えば、中国のAIチップ設計企業であるCambricon Technologies(寒武紀)は最近株価が急騰し、台湾の資本市場では考えられなかった「千倍のホームラン」のような成功例となった。このようなリターン構造は、米中のようにレバレッジの効いた資本市場でなければ成立しないものであり、中国市場に賭けた投資家たちは、その決断を後悔していないという。

ほとんどの企業は市場を選択した後、米中それぞれの経営基盤を明確に分けざるを得ず、両方でビジネスを展開するという事例はほとんど見られない。ただし例外も存在する。筆者の観察によると、上流工程に位置し、技術的にリードしている一部の台湾半導体サプライチェーン企業は、米中両市場との関係を維持しているケースがある。

それもそのはずで、TSMC(台湾積体電路製造、台積電)は先端プロセスノード(advanced process nodes)において世界トップの地位を誇り、それに伴い台湾国内のサプライチェーンも前工程・後工程それぞれに必要な装置、材料、化学品の開発に力を入れている。台湾のこうした技術優位性は明確であり、中国側もこうした企業との連携を積極的に模索している。その結果、一部のサプライヤーは台湾と中国の双方でビジネスを継続できているのだ。

TSMC主導で「集団戦」、インテル・サムスン・Rapidusのサプライチェーン参入を狙う

2025年9月初旬に開催された台湾半導体展(SEMICON Taiwan)で、ある装置メーカーが筆者に語ったところによると、現在台湾の半導体装置・材料・化学関連のサプライチェーン企業は、TSMCと共に技術強化を進めているという。TSMCが欧米や日本市場に進出するのに伴い、これらのサプライヤーもインテル(Intel)、サムスン(Samsung)、そして日本の先端半導体企業Rapidusのサプライチェーンに参入するチャンスが広がっている。これは、TSMCが台湾産業を率いて国際競争の壁を突破する「集団戦」のような戦略的躍進である。

これらのサプライチェーン企業の多くは、5ナノメートル以下またはEUV(極端紫外線)関連の製造プロセスといった先端工程向けにサービスを提供している。そのため、中国企業もこの技術や製品を強く求めている。しかし、米国の対中輸出管理や技術規制に直面する中で、台湾企業の中にはトラブルを避けるため、中国顧客との取引を完全に控えるところもあれば、法令の細則を精査し、違反がないことを確認した上で慎重にビジネスを進めている企業もある。

現在では、中国も自国の半導体サプライチェーンの育成を進めており、NAURA Technology Group(北方華創科技集団)といった半導体装置メーカーが中国株式市場で高評価を得ている。同社は今年の台湾半導体展にも出展していたが、ブースでは企業イメージ広告の掲示にとどまり、実機の展示は一切なかった。

北方華創は各種半導体製造装置の開発と販売に注力しており、その市場は現在のところ中国国内に限定されている。仮に海外展開を図るとなれば、国際的な半導体大手による特許訴訟のリスクに直面することは避けられず、これが「出海」最大の障壁の一つとなっている。

台湾企業の中には、北方華創の装置を導入したものの、性能の安定性や製造歩留まり、操作性の面で期待を下回ったとする声もある。こうした点から見ても、中国の国産装置メーカーは、技術成熟度や品質において国際トップクラスの企業とまだ大きな差があることが明らかだ。

筆者は1990年に国立交通大学(現・国立陽明交通大学)を卒業したが、当時の同級生たちの進路を大まかに調べたところ、現在ではその大多数が米国主導の半導体サプライチェーンに加わっており、中国市場に特化している者はごく少数にとどまっている。米中G2体制は、世界を真っ二つに「ハードカット」したかのような状況を生み出しており、筆者の同窓ネットワークにも「米国と中国、まさに一国ずつに分かれる」構図が顕著に現れている。

とはいえ、世界情勢がどのように変化しようとも、40年来の学友としての絆は変わらない。米中対立によって産業が分断される局面に直面しても、台湾の産業が今後も技術を磨き続け、優位性を維持できれば、国際競争力が失われることを過度に心配する必要はない。

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