TSMCが工場を建てる先へ、台湾の大学も人材育成を展開:陽明交通大学、2027年にアリゾナで開講、2030年以降に米国分校を申請へ

TSMC
著者:林宏文
TSMCが工場を建てる先へ、台湾の大学も人材育成を展開:陽明交通大学、2027年にアリゾナで開講、2030年以降に米国分校を申請へ

ドイツの学生は台湾で研修を受け、台湾の学生はアリゾナで実習する。TSMCと深いつながりを持つ大学が「エコシステム大学」構想をまとめ、台湾と米国の半導体クラスターをつなぐ統合役を大学が担うべきだと提言している。

世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが米アリゾナ州に投資し、台湾の電子産業が世界市場へ進出する新たな流れを生んでいる。では、台湾の大学や研究機関は、この台湾企業のグローバル投資の波の中で、どのような新しい役割を担うべきなのか。

TSMCが米アリゾナ州とドイツのドレスデンに工場を建てた後、人材はどう追いつくのか。地政学が台湾半導体産業の海外展開を急がせる今、これはもはや台湾だけの問題ではない。TSMCのエコシステムを受け入れようとする国々は、すでにそのために資金を投じている。ドイツでは連邦政府とザクセン州が学生を台湾での研修に送り出し、米アリゾナ州ではピマ郡が、台湾の大学と連携する人材拠点に参画している。

台湾・新竹に本部を置き、TSMCの主要な人材供給源の一つである国立陽明交通大学(NYCU)は、最新の計画で台湾発のもう一つの答えを示した。台湾流の半導体人材育成を、TSMCの海外工場の周辺に展開し、現地の大学とエコシステム型の連携を築くというものだ。2026年1月、陽明交通大学は米アリゾナ大学と「タレント・アンド・イノベーション・ハブ(Talent and Innovation Hub、TIH)」の設立で合意した。2027年の開講を予定し、2030年以降には台湾の教育部(日本の文部科学省に相当)に米国分校の設置を申請する計画である。その一方で、ドイツの学生はすでに逆方向のルートを歩んでいる。台湾の大学で講義を受け、台中にあるTSMCの研修センターで実習し、その後、TSMCの欧州工場ESMCが建設中のドレスデンへ戻るのだ。

2026年9月初め、SEMICON Taiwan(国際半導体製造装置材料協会SEMIが毎年台北で開く産業展示会。2026年の会期は9月2日から4日)の期間中、陽明交通大学の林奇宏(Chi-Hung Lin)学長と孫元成(Jack Sun)副学長は、アリゾナ大学(UA、アリゾナ州ツーソンにある州立大学)で研究・パートナーシップを統括するシニア・バイス・プレジデントのTomás Díaz de la Rubia氏を招いた。私はこの期間に、林学長、陽明交通大学材料科学・工学科の曾院介(Yuan-Chieh Tseng)特聘教授(Distinguished Professor)、そして米国のチップ設計ソフトウェア企業シノプシス(Synopsys)の台湾董事長(会長)である李明哲(Robert Li)氏に話を聞いた。そこで見えたのは、大学の新しい役割を懸命に築こうとし、その役割を「第四世代大学」という理論の枠組みで説明する陽明交通大学の姿だった。これらの構想はきわめて先見的で創造的であり、台湾の大学・研究機関に大きな示唆を与えると私は感じた。以下、取材で得たことを整理する。

SEMICON Taiwanの期間中、陽明交通大学の林奇宏学長(右から2人目)と孫元成副学長(右端)は、アリゾナ大学のTomás Díaz de la Rubiaシニア・バイス・プレジデント(左から2人目)を招いた。
SEMICON Taiwanの期間中、陽明交通大学の林奇宏学長(右から2人目)と孫元成副学長(右端)は、アリゾナ大学のTomás Díaz de la Rubiaシニア・バイス・プレジデント(左から2人目)を招いた。

陽明交通大学は2021年、陽明大学と交通大学の統合によって誕生した。新竹のメインキャンパスは、台湾半導体産業の中心地でありTSMC本社の所在地でもある新竹サイエンスパークに隣接している。交通大学とTSMCの縁は深い。TSMCの魏哲家(C.C. Wei)董事長兼CEOは交通大学電機工学科の卒業生で、現職の上級幹部にも交通大学出身者が複数いる。今回アリゾナ大学の一行を迎えた孫元成副学長自身が、TSMCの元最高技術責任者(CTO)である。2013年には孫氏がTSMCを代表して、交通大学との間で「交通大学・TSMC共同研究センター」(現在の陽明交通大学・TSMC共同研究センター)の設立協定に署名した。台湾最大のオンライン人材紹介プラットフォームである104人力銀行と、台湾政府が設立した応用研究機関の工業技術研究院(ITRI)が共同でまとめた2025年の半導体人材報告書では、半導体企業が採用したい大学として陽明交通大学は2位に入っている。

なぜ政府でもTSMCでもなく大学が統合役なのか:陽明交通大学とアリゾナ大学の「エコシステム大学」報告書

まず、曾教授から宿題を出された。陽明交通大学とアリゾナ大学が共同で執筆した「エコシステム大学」構想の報告書を読むことだ。この報告書はまだ公開されておらず、両校は今後、正式な論文として発表する予定である。以下は私が読んだ上での整理だ。報告書は、米国が製造業回帰を進める中で、台湾と米国が手を組んで両地に半導体エコシステムを築けると主張し、今後5〜10年の行動計画を示している。

報告書が示す「第四世代大学」の新しい定義は、大学の明確な進化の流れを前提にしている。第一世代の大学は「知識の伝達」(教育)を担い、第二世代は「知識の創造」(研究)、第三世代は「知識の商業化」(起業型大学)を担った。そして今、形になりつつある第四世代が「エコシステム大学(Ecosystem University)」であり、その中核機能は「エコシステムの統合(ecosystem integration)」である。

エコシステム大学における最も重要な概念の転換は、「価値創造(value creation)」から「価値のオーケストレーション(value orchestration)」への移行だ。中核となる問いもそれに伴って変わる。従来の大学は「大学は何を生み出せるか(What can the university produce?)」と問い、エコシステム大学は「大学は、エコシステムが何を実現できるよう支援できるか(What can the university enable the ecosystem to accomplish?)」と問う。一言でまとめれば、大学は、個別に活動する主体(actor)から、多様な主体をつなぐ統合役(integrator)へと変わる。

報告書は陽明交通大学(NYCU)とアリゾナ大学(UA)の連携を実証事例とし、台湾の半導体クラスターとアリゾナの技術クラスターが、二つの大学というアンカー(錨)を通じて結びつき、従来の「大学対大学」の二者間協力ではなく「エコシステム対エコシステム(ecosystem-to-ecosystem)」のつながりを形づくると論じている。

この報告書を読んで、私はとくに革新的な点が五つあると感じた。

第一に、理論の枠組みは無から生まれたものではなく、確立された二つの学術的系譜の上に立っている。一つはWissemaの第三世代大学(起業型大学)理論、もう一つはEtzkowitzとLeydesdorffによる大学・産業・政府のトリプルヘリックス(Triple Helix)理論だ。報告書の貢献は、三者構成のトリプルヘリックスだけでは十分ではなく、より分散的でネットワーク化されたエコシステムへと枠組みを広げる必要があると主張した点にある。さらに、四重らせんやN重らせんにも言及している。

第二に、「なぜ今なのか(Why now)」の分析が明快である。報告書は四つの構造的な推進力を挙げる。技術の複雑化(最先端技術には分野や組織を越えた能力が必要)、地政学的競争(半導体とAIは国家安全保障と結びついた)、グローバル化の分断(摩擦のない世界統合はもはや当然ではなく、信頼できる関係が戦略的資産になった)、社会課題の複雑化(気候、エネルギー、公衆衛生はいずれも国境を越える)。この四点によって、エコシステム大学は単なる美しい概念ではなく、時代の構造変化への必然的な応答へと引き上げられている。説得力のある論証だと私は思う。

第三に、報告書の最も重要な論証は、「なぜ政府や企業ではなく大学が統合役を担うのか」という問いにある。答えも明快だ。政府には政治的権威があり、企業には資本と市場の力があり、投資家には資金がある。しかし、知識、人材、制度的正当性(institutional legitimacy)、幅広いネットワークを兼ね備え、なおかつ一定の組織的自律性を保っているのは大学だけである。

だからこそ大学は、商業的には競合しながらも戦略的には利害を共有する主体を招集するのに適している。この「中立的なアンカー」という論証は、報告書全体で最も中核的で、最も独創的な貢献であり、エコシステム大学がなぜこの役割にふさわしいのかという問いに正面から答えている。

第四に、陽明交通大学とアリゾナ大学の事例における「一つのアンカー、二つの回廊」という論証は具体的だ。報告書によれば、陽明交通大学は「TSMCとつながる人材回廊」二本の台湾側の入り口になっている。台湾から見て、一本はアリゾナ大学とのTIHで、方向は対米・アウトバウンド(外向き)、アリゾナ大学が所在するピマ郡(Pima County)政府を通じて推進される。

もう一本はSTIPT(Semiconductor Talent Incubation Program Taiwan。ドイツ東部のザクセン州、ドレスデン工科大学、TSMCが共同で進める台湾半導体人材育成プログラム)で、方向は対欧州・インバウンド(内向き)、ザクセン州政府を通じて推進される。ドイツの学生を台湾に送り、台中にあるTSMCの新人研修センターで研修を受けさせ、最後にTSMCの欧州工場(ESMC)が建設中のドレスデンへ戻す。

報告書には要点を突く一文がある。二つの回廊はいずれも同じ企業(TSMC)を軸に回り、いずれも同じ大学を入り口にしている。これこそが「幅広いネットワークを持つ機関」と「エコシステムのアンカー」の違いだ、というものである。理論を実践と結びつけ、構想を実行可能な行動に変えている。

第五に、報告書が示すいくつかの対になった概念は、伝わる力が強い。たとえば「人材パイプライン(talent pipeline)から人材循環(talent circulation)へ」。従来型のモデルでは学生の最初の就職で大学の責任は終わるが、エコシステム型では卒業生が「ネットワークの中にとどまり」続ける。また「競争力からレジリエンス(強靱性)へ(from competitiveness to resilience)」。効率の高いシステムは能力が過度に集中するときわめて脆くなりうる。だから「レジリエンスのない競争力は脆い(competitiveness without resilience is brittle)」のだ。対比の明快なこれらの概念は、学理に裏づけられ、記憶にも残る。成熟した論述の技法である。

もちろん、第四世代大学の概念は明快で、構造も完成しており、時代の要請にも合っている。ただし、検証には時間が要る。要はどう推進するかだ。陽明交通大学はすでにアリゾナ大学とTalent and Innovation Hub(TIH)の協定を結んでおり、エコシステム大学の理念を三段階の実行計画に落とし込もうとしている。

2026年1月28日、陽明交通大学(NYCU)とアリゾナ大学(UA)は台湾でTalent and Innovation Hub(TIH)の協定に署名した。
2026年1月28日、陽明交通大学(NYCU)とアリゾナ大学(UA)は台湾でTalent and Innovation Hub(TIH)の協定に署名した。

TIHの中核目標は、陽明交通大学が産学創新研究学院(IAIS)を通じ、北米(主にアリゾナ州)の現地大学と協力して人材・イノベーション拠点を築き、TSMCアリゾナ工場とその米国内サプライチェーンの人材需要に直接応えることにある。

TIHは単一の固定した機関ではなく、一つの「フレームワーク(framework)」として位置づけられている。北米や台湾の大学・機関の参加を歓迎し、「TSMCの投資が錨となるアリゾナで、質の高い現地人材を育てる」という目標を共に目指す。「単一拠点ではなくフレームワーク」という設計によって、柔軟性と拡張性を持たせている。

まず教室を借り、次に拠点を置き、最後に分校を開く:陽明交通大学のアリゾナ進出三段階、最後の一歩は台湾の教育部の承認次第

TIHの中核戦略は三段階の道筋をたどり、最終目標は米国での分校設立である。

第一段階は準備期で、2026年から2027年。アリゾナの大学の既存施設を借りて、試行的な人材育成拠点を設ける。この段階では短期コースとマイクロクレデンシャルのコースを開き、内容は半導体、デジタルヘルス、AIのヘルスケア応用に絞る。TSMCとそのサプライチェーンの当面の需要への対応を最優先する。

同時に双方向のインターンシップも手配する。米国の学生が台湾の研究室や企業で実習し、陽明交通大学の学生がTSMCアリゾナ工場で現場経験を積む。異文化対応と職場での言語能力も強化し、中国語教育や、職場で必要となる言語コミュニケーションの訓練も含む。認証は当初、提携大学または企業が発行し、陽明交通大学が学術的な裏づけを与える。この段階の鍵となる仕組みは指導者養成(train-the-trainer)、すなわち必要な専門知識と指導力を備えた講師を増やすことだ。

第二段階は発展期で、2027年から2029年。提携大学に半恒久的な陽明交通大学の拠点を置き、運営・広報・限定的な教育を担う現地オフィスと、本格的な教育、研究プロジェクト、地域連携を支える学術センターを設ける。この段階ではダブルディグリーや「3+2」プログラムを打ち出す可能性があり、第一段階の指導者養成の成果をより大きな規模へ展開する。重点は人材育成にとどまらず、新興分野の共同研究へと広がる。

第三段階は拡張期で、2030年以降。前二段階の成果を踏まえ、陽明交通大学は台湾の教育部に米国分校(overseas branch/campus)の設置を申請し、長期的、制度的、拡張可能な教育・研究の場となる学術イノベーションセンターを築く。これが最終段階であり、規制上の突破口を最も必要とする一歩でもある。

つまりTIHの計画は、試行拠点から半恒久的な拠点、そして正式な分校へと三段跳びで進む、堅実な段階的アプローチである。まず最小のコストとリスクで様子を見る。他者の施設を借りて短期コースを開き、実現可能性を確かめてから投入を段階的に増やし、最後に「分校設立」へ至る。この「段階的に進み、撤退も拡張もできる」設計は、計画が失敗するリスクを明らかに下げている。

現在、両校はこの三段階計画の推進に着手しており、2026年11月中旬にはアリゾナ大学でTIHの除幕式を開く予定だ。林奇宏学長、孫元成副学長、そして国際半導体産業学院の陳冠能(Kuan-Neng Chen)院長がアリゾナ大学へ赴いて出席する。

この報告書を読み終えて、私は直感的に、これは非常に重要な構想であり、とりわけ台湾の高等教育にとって発展の好機だと感じた。

過去30年を振り返ってみよう。台湾企業が中国や東南アジアへ進出した当時、現地の教育水準はまだ台湾に及ばなかった。そのため台湾企業が中国や東南アジアに大規模に投資すると、台商小学校(台湾企業が駐在員の子女のために設けた、台湾の学制に基づく学校)が後を追って設立され、駐在員の子どもたちに就学の機会を提供した。高等教育でも、少なくない台湾の大学が中国や東南アジアで現地の台湾企業幹部向けのEMBA(経営幹部向け経営学修士)コースを開き、台湾企業の教育・研修を担った。

つまり、東南アジアや中国の教育水準が台湾に追いつくまでは、台湾の義務教育も高等教育も、企業とともに海外へ出ていく余地があった。しかし今、相手は欧米や日本といった先進国であり、いずれも強固な学術・文化の土壌を持つ。台湾の教育機関が企業の海外展開にどう伴走するかは大きな試練だ。陽明交通大学はいま率先してこの一歩を踏み出し、理論から行動まで計画を整えた。期待して見守りたい。

このほか陽明交通大学は、海外の受講者が台湾で学ぶ短期の実習型半導体研修プログラムも計画している。修了証を取得できる短期研修として位置づけられ、実習を重視している点が特徴だ。たとえば海外の大学の学生を4週間台湾に招き、教員1人が引率し、学生を参加教員の各研究室に振り分けて実習させる。

実習の比率を重視するこの設計は、半導体工学科の3年生・4年生における講義と実習の比率を参考にしており、週5日を講義3.5日、実習1.5日に分けている。このプログラムは台湾の半導体実習教育の経験を広めると同時に、他国の受講者がより早く実務に馴染む助けにもなる。

台湾も半導体教育の担い手が不足:シノプシスの技術を基盤とするSiCADA、指導者養成でベトナムの15人が認定を取得

第四世代エコシステム大学という主軸に沿って、もう一つ取り上げる価値のある動きがある。半導体エコシステムの中で最も重要な、人材育成という一翼である。台湾シノプシスの李明哲董事長が推進する指導者養成プログラム(Train-the-Trainer)で、SiCADA(Silicon Creation & Advanced Design Academy。シノプシスが提供する技術とツールを基盤に設立された研修機関)を中核に据え、将来は台湾に、世界の半導体人材不足の解消に特化したIC設計の研修アカデミーを設立するというものだ。

まず、SiCADAが何をしているかを見ておこう。SiCADAは、EDA(チップ設計用ソフトウェア)ツールの世界2大手の一つであるシノプシス(調査会社トレンドフォースによると、2024年のシノプシスの世界EDA市場シェアは31%)が提供する技術、EDAツール、教材を基盤とし、IC設計エンジニアの専門研修アカデミーと位置づけられている。SiCADAによれば、そのビジョンは明確で、AIを活用した産業主導の教育によって世界的なIC設計人材の不足を解消することだという。

李氏によれば、SiCADAの最大の強みはシノプシスの後ろ盾があることだ。業界最高水準のEDAツール、IP(再利用可能なチップ設計ブロック)、設計フローと方法論をそのまま教育に持ち込める。一般の大学や研修機関には提供できないものである。対象は個人、提携企業、政府機関にまたがり、コースは高度なIC設計、新人および外国人人材の研修を網羅し、AI支援設計を全面的にカリキュラムに組み込んでいる。

SiCADAには「六者のエコシステム」という中核理念がある。大学(理論的基礎の提供)、企業(カスタマイズした実務研修)、産業界の専門家(実戦のノウハウの伝授)、研修機関(大学にチップ試作と実習の資源を提供する公的機関の台湾半導体研究センターTSRI、工業技術研究院、新竹の産業研修機関である自強工業科学基金会TCFSTなど)、シノプシスの研修(EDAツールと手法)、そして中央で統合するSiCADA自身である。SiCADAは自らを、大学のVLSI(超大規模集積回路)教育と産業界の人材ニーズとのギャップを埋める一つのピースと位置づけている。

さらにSiCADAは、これまで3年余りの取り組みを重ね、陽明交通大学とも共同で展開を進めている。提供する教育は三つの範囲に及ぶ。台湾の中学3年から高校3年に相当する生徒向けの科学普及教育、大学生向けのVLSIおよびCMOS(主流のチップ製造技術)IC設計コース、そして理論と結びついた実習コースである。

IC設計の道を志す学生に実践の基礎を身につけさせる学生向け研修に加え、SiCADAのもう一つの大きな特徴が「指導者養成プログラム(Train-the-Trainer)」だ。ベテランエンジニアと教育者を対象に、コースと認定を通じて将来の講師を育てる。

この「学生だけでなく、教える側も育てる」という設計は、現在の市場の需要にかなっている。台湾ではいま、半導体人材を育てる教員そのものが足りない。しかも産業界の待遇が良いため、台湾の教員が産業界への転身を考える状況さえある。半導体産業の基盤を持たない国々も、現地で人材育成を担う講師を切実に求めている。「教えられる教員」の不足は人材不足の最大のボトルネックの一つであり、だからこそまず「教員を量産」しなければ規模の拡大は望めない。

SiCADAはAIの活用も重視している。受講者に「AIツールでIC設計を行う」ことを教えるだけでなく、「AIが生成した結果を評価し検証する批判的な判断力」を養うことを強調する。この点は重要だ。AI時代のエンジニアはAIを盲信してはならず、AIの正誤を判断できなければならないという中核的な素養に呼応している。

SiCADAにはすでに初期の実績がある。SiCADAが示した数字によれば、2024年夏の研修では受講者100人超、期間8週間、開講4コースで、48人の学生が16大学から参加し(9割以上が修士課程の学生)、提携企業7社がマッチングに加わった。認定試験の合格率は高く、デジタル設計検証が83%、SoC(システム・オン・チップ)フロントエンド設計が93%だった。

指導者養成の国際事例もある。ベトナムの私立Phenikaa大学傘下のPhenikaa半導体研修センター(PSTC)向けに現地で研修を担う講師15人を育成し、台湾で1週間の研修、オンラインで1週間の認定を経て、全員が認定に合格し、ベトナムでシノプシスとSiCADAの研修を担う講師陣となった。このベトナムの事例は、SiCADAの指導者養成モデルを実践した初期の事例である。

SiCADAの推進を3年にわたって担ってきた李氏は、将来SiCADAはシノプシスから独立し、国境を越えた半導体人材育成という目標に向かって進むと語る。李氏自身も陽明交通大学の卒業生であり、母校との協力をさらに深めるという。これも第四世代エコシステム大学の重要な一環であり、志を同じくする人々の参加を広く呼びかけていくとしている。

陽明交通大学の林奇宏学長も、エコシステム大学(Ecosystem University)の構築においてSiCADAが、陽明交通大学の国際的な半導体教育と専門人材育成で重要な役割を担うことに期待を寄せ、SiCADAが国境を越えた半導体人材育成へ向かうよう、より多くの人々の参加を呼びかけたいと述べている。

総じて言えば、AIと地政学という二つの駆動力の下で、半導体は最も重要な産業となった。台湾は海外へ手を伸ばさなければならず、TSMCが外へ延ばしていく力はサプライチェーンだけにとどまらない。台湾の大学もそれに伴って国際的な影響力を広げることができる。陽明交通大学とアリゾナ大学のTIHは、その新たな試みの出発点である。

そして、人材はすでに国家の戦略資源となった。台湾は自らの「人材を育てる力」を、日本、ベトナム、ドイツ、米国などへ輸出できる競争力とソフトパワーに変えようとしている。SiCADAもこの大きな戦略の中で、「産業界が自ら人材育成に乗り出す」具体例である。その今後の展開に注目したい。

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